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この作品を語ると、すべてが嘘になってしまいそうで怖い。 具体的に書けば書くほどその感触から遠ざかるような気がする。 でも、読んでいる合間に車を走らせた時なんかのふとした思いの断片を、誤解を恐れず書いてみる。 この小説を読んでイメージしたのは、風船。 内側からの圧力と外側からの圧力のバランスによって形を保っているそれ。 内と外の隔たりは、両方からのプレッシャーを受けながらも辛うじて自分の存在をアピールしている。 でも、そのバランスが崩れて形を失ったとき、もはや内の空気と外の空気に差異はない。 繋がるかどうかわからないけど、相対主義のトラップから抜け出たときにそこにあるのは、世界の中では瑣末かもしれないけれども個人のレベルでは圧倒的な、でも目には見えない根拠を持った想い。 そんな入れ替え可能な「内」と「外」が、それぞれの論拠でもって対峙することでその立ち位置を決め、振る舞いを規定する。 ・・・なんてことを考えてみたりして。 この本、自分にとってはおそらく、平野啓一郎の『日蝕』以来の衝撃、でも淡く穏やかな、それでいてどことなく冷たいピーク感がある。 三崎亜紀『となり町戦争』(2005年、集英社)
by anydaisuki
| 2005-12-31 02:01
| 一日一書
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